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花屋をしていると、日々たくさんのお客様と出会います。
お花はどれもきれいで可愛いのですが、それ以上に、
お花を手にする人の気持ちやストーリーに触れるたび、
“この仕事をしていてよかったな”としみじみ思うことがあります。
先日、小さな男の子とお母さまがご来店されました。
手には、幼稚園で描いたというおじいちゃんの絵を持っています。
「この絵といっしょにお花を渡したいんです」と、
少し恥ずかしそうにお母さまが話してくださいました。
男の子は黄色い花を指差して、「これがいい」と一言。
選んだのはひまわり。
花びらの明るい色は、子どもの笑顔とよく似合っていました。
ブーケを作っているあいだ、男の子は真剣な表情でじっと花を見つめていて、
その視線に私のほうが胸を打たれました。
きっと彼にとって、お花は“気持ちを伝える特別なもの”なのでしょう。
お会計のあと、「ありがとう」と小さな声で言ってくれたとき、
あたたかいものが心にふわっと広がりました。
こんなふうにお花を通じて気持ちがつながる瞬間こそが、
花屋のいちばんの幸せかもしれません。
別の日には、80代と思われる男性のお客様がいらっしゃいました。
奥さまが家でお花の手入れをするのが好きだからとおっしゃって、
白いミニバラの鉢植えを選ばれました。
「今日は家内が退院してくる日だから」と嬉しそうに話されました。
その一言に、なんだかこちらまで幸せのおすそわけをいただいたような気持ちになりました。
お花は、日常のなかのほんのひとときに彩りを添えるもの。
でも、その小さな彩りが人と人とのあたたかな時間を作ってくれるのだと、
お客様との出会いを通して教えられます。
今日もまた、どんな小さな物語に出会えるだろう。
そんな期待を胸に、花屋の扉を開けています。