お花には、昔からさまざまな言い伝えや迷信があります。
花屋をしていると、お客様からこんな声を聞くことがあります。
「菊は仏花だから贈り物には向かないですよね?」
「ダリアって赤はお祝い向きじゃないって聞いたんですが…」
「リンドウを飾ると健康にいいって本当ですか?」
どれも一度は耳にしたことのある話かもしれません。
でも、迷信と現代の花の楽しみ方には、ちょっとしたギャップがあるのです。
◆ 菊=仏花?
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日本では菊はお供えの花というイメージが強いですが、
ヨーロッパではむしろ“高貴な花”“長寿のシンボル”。
秋に咲く菊は、澄んだ空気によく映える美しい花です。
ヨーロッパでは花もちがとても良いので非常に人気があります。
近年はお供え用の品種ではなく、花びらがふんわりと丸いポンポン咲きや
アンティークカラーの菊も増え、ブーケやアレンジメントでも大人気。
「仏花だから」と敬遠するのはもったいないな、といつも思います。
◆ 赤いダリア=情熱の花
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真っ赤なダリアは「裏切り」や「不吉」という迷信が
昔の小説やドラマで広がったようですが、
本来の花言葉は「華麗」「気品」「感謝」。
秋の空気がひんやりしてくると、
赤いダリアは色がより深く、ベルベットのような艶が出ます。
秋の花束に添えると、その存在感はひときわです。
◆ リンドウ=元気を贈る花
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お見舞いにリンドウを贈る風習は、
昔から根に薬効があると信じられていたことに由来します。
そのせいか、「敬老の日」には林道の鉢植えが定番だったりします。
深い紫色は落ち着きがあり、秋のギフトにぴったり。
最近では淡い色合い、ピンク、白色など品種が幅広くなっています。
科学的な効能はともかく、贈られると
「気にかけてくれている」という気持ちが伝わりますね。
◆ 迷信より“季節を楽しむ”気持ちで
花屋としては、迷信を気にしすぎて花を選べないのは少し寂しいこと。
むしろその季節に一番美しい花を楽しむ気持ちを大切にしたいな、と思います。
また花言葉も同様で一つの花に本によって全く違う花言葉が存在することもあります。
店頭に並ぶ花たちは、どれも“旬”の顔をしています。
迷信の背景にある歴史を知るのも面白いけれど、
今の季節の美しさを素直に取り入れることが、暮らしを彩る近道かもしれません。
この秋は、ちょっと迷信にとらわれずに花を選んでみませんか?
旬の花はいつもそれぞれが季節の光を受けて、とてもきれいに咲いています。