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クリスマスが近づくと、
「お忙しいですね」と声をかけていただくことが増えます。

確かに、いつもバタバタといろいろしています。
リースを作り、針葉樹を束ね、花を切り、アレンジを作り、アイディアをしぼり、
気がつけばもう夕方。

けれど、そんな慌ただしさの中で、
私は時々、とても静かな気持ちになります。

早朝仕入れから帰って誰もいない店内。
針葉樹の香りだけがふわりと残る時間。
ハサミを置いたまま、花を眺めている自分に気づきます。

「今年も、ここまで来たなぁ」と。

正直に言えば、
思うようにいったことばかりではありません。
反省することも、迷ったことも、
「これでよかったのかな」と考える夜もありました。

それでも、花は季節になるとちゃんと咲き、
市場には冬の花が並び、
クリスマス前になると、こうしてまた花を選んでくださる方がいます。

その事実だけで、少し救われる気がするのです。

この花は、誰のところへ行くのだろう。
どんな一年を過ごした方が、どんな想いで手に取るのだろう。

ご家族の集まる食卓かもしれないし、
一人で迎える静かな夜かもしれない。

誰かを想って選ぶ花もあれば、
「今年はよく頑張った」と自分に贈る花もあるでしょう。

 

私はその瞬間に立ち会わせてもらっているだけなのに、
花を束ねながら、
その方の一年の端っこに、そっと触れているような気持ちになります。

 

若い頃は、
忙しくしている自分に満足していたように思います。
でも今は、
「誰かの時間に寄り添えているかどうか」を
自然と考えるようになりました。

 

クリスマス前の花は、
祝うためだけのものではなく、
一年をねぎらうためのもの。

そう思いながら、今日も美しく咲いた花たちを整えています。

 

 

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